行雲流水

 夢…/いつからか心に棲みついていた/遥か遠くに光る蜃気楼/どこまでも追いかけずにはいられなかった/それは生きるよろこび生きる力/時が流れても人が笑っても/少年の日の浅い眠りはさめることなく/いつまでもいつまでも/夢は終わらない。最近、こんな素敵な詩に出会った。音読していて心に清々しいものを覚えた▼夢といえば、球児たちの夢はすごい。最近は、日本のプロ野球の選手たちがアメリカンドリームを抱いて大リーグへ移籍した。野茂、イチロー、長谷川、松井、田口、城島、井口、等々挙げれば切りがない。いずれも、日本のプロ野球界を代表する名選手たちだ▼昨年は、松坂、井川、桑田、などの投手陣が移籍した。特に、松坂は話題を独占した。大リーグ本拠地でハンドレッド・ミリオンと騒がれ話題の人となった。帰国後もファンの関心を席巻したほどだ。その松坂だが、帰国後のNHKのインタビューで、将来はアメリカの大リーグで百億円プレーヤーになることが小学生の頃からの『夢』だった、と胸の内を披瀝し、多くのファンを驚かせた▼ところで、移籍では先輩であるイチロー帰国のニュースは、松坂のそれに比べて派手ではなかったが、イチローらしい帰国後の振る舞いが報道された。少年野球大会に招待され彼は閉会式で挨拶を依頼された。その時、野球云々するかと思いきや、見つめる少年野球の選手たちに向かって、あの理知的な表情で次のように語った▼「君たちが、いじめられている友だちやいじめている友だちを見つけたら、野球を一緒にやろうよ、一緒に遊ぼうよ、と声をかけてあげてよ」。実に印象的だった▼あの華やかな大リーグの世界にあっても、「いじめによる自殺」という祖国日本の少年たちの悲しい事件を忘れなかったのだろう。いかにも彼らしいではないか。

(2007/01/05掲載)

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