行雲流水

 ある幼稚園から帰るとき、数名の園児たちが近寄ってきて、門扉の閉め方を教えてくれた。そして、「わたしは五歳」とか「わたしはひまわり組」などと自己紹介を始めた。「おじいは肩と腰は痛まないの」と一人が聞くので、「今は痛まない」と答えて、「あなたのおじいは痛むの」と聞いたら、その子は深くうなずいた。続いて他の子どもたちも自分のおじいのことを次々に話しだした。子どもたちは愛情をかけられて大事に育てられており、他人を思いやる心が確かに芽生えていることを感じさせた▼本屋で、頁をめくっていた少年がつぶやいた「よし、小遣いをためてこれを買おう」。耐えて待つことも、その間希望を膨らますことも、計画し選択する力も育つように育てられていると、思った▼クリスマスには街にイルミネーションがきらめき、見えないものの存在をこどもたちは信じる。いずれサンタクロースの正体を知ることがあるにしても、子どもたちの心に働きかけて生み出される「信じたり想像したりする能力」はサンタからの見えない最大のプレゼントとなる▼こどもたちには、その時々の発達課題を丁寧に充足させたい。そのためには、家庭が経済的にも精神的にも安定していることが重要である。また学校では、教師の煩雑な事務処理の負担を軽減して、もっと多く児童・生徒に向き合うようにすべきである▼不毛な論議は、無益であるばかりでなく、重要なことを隠蔽し、将来への不安の種を宿す▼「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」(児童憲章)。

(2006/12/27掲載)

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