行雲流水

 歴史的事変が一定の史観として定着するのは、百年も経なければならないとの論がある。その意味では太平洋戦争も戦後六十年余、未だ同時代史的渦中にあると言えようか▼昭和十六年のきょう十二月八日は日本軍がハワイの真珠湾を奇襲し米英に宣戦布告をした日である▼戦後間もない一九四八年、ヘレン・ミアーズ(GHQ労働局諮問委員)は真珠湾攻撃について、一方的な裏切りというよりも、圧倒的に強い国との力ゲームに引きずり込まれたと思っている国が、経済封鎖に対して挑んだ攻撃だったと述べていることは興味深く、当時のわが国の立場を擁護するかのようである▼今日一般的には日本軍国主義は中国などアジア諸国を侵略し、それを阻止しようとした米、英と衝突したとの見方で、ファシズムから民主主義を守る戦いであり、アジアの民衆のみならず日本の大衆を解放し、日本を民主化するという、戦勝国の大義名分の立場をとる▼中国、韓国の靖国等歴史認識問題も新総理の訪中、訪韓により鳴りを潜めた感があるが、北朝の核が火急の問題となったことにもよろう。しかし事有るごとに両国とも日本バッシングの効果的な切り札として何時でも行使するのではあるまいか▼ところで広島、長崎の原爆投下の戦争責任はどう問われたのか、また沖縄は地上戦で焦土化し、米軍の占領・統治下から、今日の弾道ミサイル迎撃用のPAC3配備まで、常に基地問題に翻弄され、戦と向き合う生活を強いられてきた。沖縄の戦後は未だに終わらずじまいなのだ。

(2006/12/08掲載)

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