行雲流水

 詩「千の風になって」はテレビで放映されるなど、評判になっている。この詩を日本に紹介した新井満氏は「妻をなくした友人を慰めるために翻訳し曲をつけ、歌った」と語っている(ラジオ深夜便「こころの時代」)。この詩の作者は不明だが百年も前から欧米では有名でいろんなところで朗読され人々に感銘を与えてきたという。新井氏は次のような例をあげる▼一人の青年が「もし自分が死んだときには、これを開封してください」と一通の手紙を両親に託して死んだ。両親は息子の追悼の会で手紙のなかから出てきたこの詩を朗読した。その模様が放映されると、詩のコピーが欲しいという希望が、イギリス全土から放送局に寄せられたという▼「千の風になって」。私のお墓の前で 泣かないでください/そこに私はいません 眠ってなんかいません/千の風に 千の風になって/あの大きな空を 吹きわたっています▼秋には光になって 畑にふりそそぐ/冬はダイヤのようにきらめく雪になる/朝は鳥になって あなたを目覚めさせる/夜は星になって あなたを見守る▼私のお墓の前で 泣かないでください/そこには私はいません 死んでなんかいません/千の風に 千の風になって/あの大きな空を 吹きわたっています。千の風に 千の風になって/あの 大きな空を吹きわたっています。あの 大きな空を 吹きわたっています▼この詩では、生者が死者を悼むのではなく、逆に死者が生者を慰める。事実多くの人が慰められている。生死観の相違を超えて、そこには「真実」がある。

(2006/11/22掲載)

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