行雲流水

 教育基本法は、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示したものである。第一条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和な国家および社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない▼この理想が完全に実現したとは勿論言いがたいがその原因については考えが様々である。この教育基本法の改定が国会の審議日程にのぼるこの時、国の将来にかかわる教育のあり方について考えることが主権者としての国民に強く求められている▼争点の一つは「愛国心」である。条文に教育の目標として「わが国と郷土を愛する態度を養う」という文言を入れるべきだという意見、愛国心の強制につながらないように前文に「国を愛する心を涵養する」と入れるべきだとする意見。さらに現法を守る立場で「郷土や国を愛することは自然な心情、憲法が保障する思想・良心の自由、内心の自由に公権力が踏み込む危険性を指摘する意見もある▼第十条に曰く「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」。この項に対しても意見が分かれる▼第三条には教育の機会均等がうたわれているが、家庭の経済格差が学力の二極化をすすめている実態がある。教育現場の苦悩を見よ。拝金主義、効率主義と市場主義の社会が教育に影を落としてもいる。まずは、現実を検証すべきである▼「角を矯(た)めて牛を殺す」ことがあってはならない。

(2006/11/08掲載)

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