行雲流水

 寒露である。この季節、サシバがやってくる。サシバは大陸や本州の山々で繁殖、渥美半島の伊良湖岬を通り、鹿児島の佐多岬に集結、北よりの風が吹く気象条件のよい日に南下、徳之島等を経て越冬地のフィリピンやインドネシアの島々に渡る。その途中、ここ宮古で羽を休める▼サシバの魅力はその精かんな雄姿とともに、飛翔する姿の美しさにある。大空に、緩やかな曲線を舞い、直線を鋭く滑空する▼ヒトは風雨に耐えて旅を続ける姿に感情移入することもあるだろうし、らせん状に輪舞しながら上昇していく、いわゆるタカ柱に、神性を感ずる人もいる。サシバはまた過ぎ去った日々への郷愁を蘇らせる。DNAに刻まれた飛翔の衝動やコンパスの謎への好奇心もかきたてる▼サシバの本場は伊良部であるが、久松の海岸付近でも結構見られる。8日には、野鳥の会のみなさんが伊良部地区では約3200羽、久松地区で200羽余りをカウントしている▼「第1回サシバ友達フォーラム」で伊良部の子どもたちは宣言した「僕たちの昔からの友達サシバは空から来るふるさとだ」。そのふるさとを守るため、伊良部中学校生徒会では今年もサシバ保護旬間を設けて、意欲的な取り組みが行われた。各学年でサシバ保護のためのポスターを作成、学級活動のなかで標語をつくり、サシバ保護集会で表彰が行われた。集会ではまた少年自然の家の岡徹専門員の講話があり、全校生徒による「サシバ保護の誓い」がなされた。広報パレードには母親の会も参加、共に「サシバ保護」を訴えた。地域住民の協力が強く求められる▼サシバは友達。毎年仲間を沢山連れて来い。タカドーイ、デンゴ。

(2006/10/11掲載)

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