行雲流水

 昨年厚生労働省が発表した「医療制度構造改革試案」本文の二項は「医療費適正化に向けた総合的な対策の推進」で、中身は(1)中期的な医療費の適正化(2)公的保険給付の内容・範囲の見直し等だった▼適正化と見直しの行き着く先は患者負担の引き上げ。中でも矛先は「高齢者患者の負担増」に向けられていた。同法案は衆議院委員会で野党反発の中自公両党によって強行採決。数の暴力と批判されたが本会議でも可決された▼衆議院に引き続き参議院本会議でも賛成131反対100で可決。しかし国の医療費抑制を高齢者の負担増にすり替えているとの抗議は今も衰えてはいない。去る一日施行された医療制度改革関連法(一部)による高齢者患者の自己負担増加は家計を直撃▼加齢と共に身体に異常をきたしやむなく長期加療の病床に臥す「医療型療養病床」では食材料費・調理費・水道光熱費等の負担増は1日920円も増す。他方郵政民営化に向けた郵便局の再編計画で「集配業務廃止」の憂き目を被むる地方住民▼とはいえ日本は議会制民主主義の国である。国会で多数を制した党(政権)の政策がまかり通る。政権党は国民多数の負託を受けて国政を預かり政策を遂行している。そして国政選挙でこれら政策を推進する政権党を選択したのは紛れもなく主権者たる国民▼「清き尊き一票」は単に選ばれる側の選挙運動用語ではないはず。標語は一票の重みやその公正な行使、さらには有権者国民の投票意識の高揚を促している。

(2006/10/06掲載)

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