行雲流水

 「改革なくして成長なし」を御旗に強引とも思える手法で自我を押し通してきた小泉首相の改革路線の五年余。先だっての新聞テレビは経済不況・倒産・リストラの言葉に事欠かなかったが昨今日本経済はどん底から抜け出し景気は回復と報じている▼しかし一方では米国型市場原理主義政策を取りたてて推進してきたが故にいわゆる勝ち組負け組の「格差社会」を生み出したとも指摘されている。中でも大手企業のリストラによって派生した「非正社員」に対する格差問題は深刻である▼厚生労働省の調査(二〇〇五年度)によると非正社員の四割弱は税込み月給十万未満で全体の平均年収は百二十万〜百三十万円だという。自民党総裁選でも格差問題について候補者各位は三者三様に発言していた▼「勝ち組負け組が固定しない社会の実現」(安倍氏)「弱肉強食の冷たい社会であってはならない」(谷垣氏)「高齢者の雇用の場づくり地域間格差の是正」(麻生氏)と。再選された民主党の小沢一郎代表も格差解消は最重要課題と位置づけた▼内閣府の企業アンケートによると子どもの病気看護のため休める企業は正社員七二・一%。非正社員は半数にも満たない四八%。「家族手当」も格差は四七・一%。仕事と育児の両立支援に積極的な経営トップの企業は三割弱で格差は歴然▼医療費の窓口自己負担も増大して通院足踏み格差は健康問題にも波及。経済的格差はあらゆる領域において今や一大社会問題である。

(2006/09/22掲載)

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