行雲流水

 敬老の日・週間。高齢者の長寿を寿ぎ、社会や家族のために尽くされた御労苦に感謝して、自治体や各地域、幼稚園等でいろいろな行事が催されている▼その一つ。沖縄女子短大付属・報徳幼稚園では「お爺ちゃんお婆ちゃんお招き会」が行われた。「百歳の歌」を初めに楽器遊びや体育遊び、エイサー、それに大学生(実習生)の劇「おおきなかぶ」や母親たちによる三線演奏があって、お爺ちゃんお婆ちゃんたちを喜ばせていた▼引き続き、鎌田佐多子教授の講話があった。そのなかで教授は、祖父母の孫たちの人格形成に果たす役割の大きさを次のように強調された。孫に対する無償の愛、温かい眼差しが情緒を安定させ、人格の基を確かなものにする。おそらく、祖父母の持つ気持ちのゆとりが孫可愛さの感情を豊かにし、ゆったりと浸透していくのだろう。そのためにも接触を多く持つことが大切。こうして育つと観念的なものにとどまらない思いやりの行動の出来る子に育つ▼話をしたり本を読み聞かせることの大切さについても話された。絵本『いのちのまつり』では、坊やに二人の親がおり、親それぞれに二人の親がおり、さらにそれぞれに二人の親がいる。たどっていくと何千何万人となる。おばあさんが言う「そのうちの一人でも欠けていたら坊やは生まれなかったんだね」▼本の内容はもとより大切だが、誰がいつ何処で一緒に読んでくれたかということの重要さが最近特に強調されている▼不確かな社会のなかで人の孤立化や孤独感が深まっている。共有する記憶こそが人と人を強く結びつける。

(2006/09/20掲載)

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