行雲流水

 あまりにもさまざまな事件や人殺しが日常茶飯事化し、そうしたことに感覚が麻痺していく人々の心の荒廃を憂える。八十を過ぎた妻がこれまた高齢の夫を刺殺する。戦前戦後の苦しい時代を耐え、生き抜いた人々にさえ広がる心の歪み▼逆に年寄りなどを食い物にする詐欺師や盗人の横行など、かつての「安全な国」はまさに神話となり、今にもバラバラになりそうな腐敗の構図を見る思いである▼勝ち組み負け組みといわれる格差社会が生み出す歪みなのか、豊かさを享受してきた人々が言える台詞でないが、「清く貧しく美しく」という言葉が金玉の声にさえ思える▼ところで孔子は、六十を耳順(じじゅん)(人の言うことが素直に聞ける)。七十を従心(じゅうしん)(心の欲する所に従(したが)えども矩(のり)を踰(こ)えず)と述べた。「七十ともなれば、自分の心のままに行動しても過ちを犯さない」という、古希を迎えた今の自分が、そうした爛熟の境地に到底及ばないことに、あらためて愕然とするのだが▼「敬老の日」は二〇〇三年から九月の第三月曜日となった。以前は九月十五日で、この日を記念日として残すために、老人福祉法は九月十五日を「老人の日」、十五〜二十一日を「老人週間」と定めた▼老人の福祉に対する国民の関心と理解を深め、老人に対してみずからの生活向上に努める意欲を促すことを趣旨としている。社会奉仕活動、シニアスポーツなどに積極的に参加するとともに、趣味・特技を生かし常に心身をリフレッシュすることが健康保持にもよく、そのことが最大の社会貢献でもあろう。

(2006/09/15掲載)

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