行雲流水

 ダークホースとは本命に対する穴馬のことだが、「惑星」にはこのダークホースの異義もある。冥王星は惑星の中でもさらにダークホース的存在だったが、その座を失うことになった▼先月の二十四日プラハで開かれた国際天文学連合の総会は従来の太陽系惑星から冥王星をはずし、水金地火木土天海の八個とする新しい定義を賛成多数で決議した。科学の世界で、多数決で決めるという手法には一種の違和感があるが、それだけにこの哀れな冥王星について調べてみたくなった▼米国の天文学者トンボーが発見したのが一九三〇年、発見後七十六年になるが、その公転周期は約二百四十八年だから発見以来太陽の周りを一周もしないうちに失格したことになる▼冥王星は他の太陽系惑星と基本的にその生い立ちに違いがあるようだ。惑星はほとんど同じ平面を同じ向きに公転していて、軌道はほぼ円形であるが、冥王星は極端な楕円軌道で、惑星たちの公転面から外れている。四十天文単位(太陽から地球までの平均距離を一天文単位という)と離れており、地球の質量の〇・〇〇二三倍と格段に小さく、似たような天体が一九九〇年以降次々と見つかっている▼たとえば一九九二年に発見された「エッジワース・カイパーベルト」とよばれる小天体群は三十〜五十天文単位付近で千以上が確認されている▼冥王星は「矮惑星」として分類されることになったが、どれを含めるかは今後の話し合いで決まるという。宇宙観測の精度が高まるにつれ既成の概念が今後も変化していくのであろう。
 

(2006/09/01掲載)

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