行雲流水

 太陽は、二千億個の星を持つ銀河の中の一つの星である。壮大な銀河に比べると小さい位置を占めるに過ぎないが、太陽とその惑星こそが人間にとっては身近な存在であり、古来関心を持たれてきた▼ギリシャやローマの人々は惑星に神々の名前をつけた。水星は太陽のまわりを忙しげに回っていることから、伝令の神ヘルメス、金星は毎晩美しく輝くので美と愛の神アフロデイーテ(ビーナス)、火星は赤くて血を連想させることから戦争の神アレス、木星は王者の輝きを放っているということで、神々の王ゼウス(ジュピター)と呼ばれた▼オモロ人はうたう。あがる あかぼしや(あがる明星は)、かみぎゃ かなままき(神の金矢じり)。宮古では金星(宵の明星)をユイフォーブス(夕飯を食べる頃に出る星)と言った。畑仕事を終えて夕げに向かう道すがら、その美しさに心をうばわれていたのだろうか▼惑星が関心を引いたのは、その動きの特異さにもよる。例えば金星は太陽の方向から大きく離れることはない。また、火星は恒星の間をぬって少しずつ移動する。しかも留まったり逆行したりする。金星は地球より内側の、火星は外側の軌道を公転しているからで、作図してみるとその原因は明らかである。地動説を生み、その正しさを示す現象でもある▼国際天文連合の新しい定義によって小さな冥王星が惑星からはずされたことは仕方のないことである。ちなみに、太陽系には二千個の小天体がある▼宇宙は、人間において自らを認識し表白する。子どもたちは「冥王星が可哀想」などと言いながら星空の彼方へ思いを馳せている。

(2006/08/30掲載)

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