行雲流水

 雲はわき/光あふれて/天高く/純白のたま/今日も飛ぶ−第八十八回全国高校野球選手権大会は甲子園を舞台に数々の熱戦を展開、早稲田実業が初優勝を飾って、その幕を閉じた▼今年の大会は接戦あり、大逆転ありで、野球の魅力を堪能させた。圧巻は早稲田実業対駒大苫小牧の決勝戦で、駒大苫小牧・田中と早実・斉藤の壮絶な投げ合いのまま決着がつかず、延長十五回引き分け再試合となった。再試合は熱戦の末、早稲田実業が勝利を収めた▼県代表の八重山商工は一回戦千葉経大付属との試合で驚異の粘りをみせて逆転、勝利を収めて県民を歓喜させたが、三回戦では一回戦ほどの気迫はなく、今後に課題を残した▼高校野球の魅力は、そのひたむきさにある。最後まで諦めることなく全力を出し切って、きびきびとプレーする。青空に白球が飛び、選手が全力で疾走する。惜しみない拍手でスタンドが揺れる▼日本のスポーツ界には商業主義と勝利至上主義が深く進行している。しかし、国民はその正しいあり方を求めていることは、さきに行われたボクシングの〔疑惑の判定〕に対する態度をみても明らかである。高校野球こそが模範を示すものであることを国民は期待する。高校野球界に大きな功績を残して亡くなられた日本高野連前会長の牧野直隆氏は「甲子園は目標だが、目的ではない。目的は野球を通じての人づくりである」と語っている。野球が球児たちの将来の人生に与える影響は大きい▼大会歌「栄冠は君に輝く」は二番で次のように歌う「一球一打にかけて/青春の賛歌をつづれ/ああ、栄冠は君に輝く」。

(2006/08/23掲載)

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