行雲流水

 大野山林などの林道をウオーキングするのは、小鳥のさえずりに耳を傾けたりする楽しみもあるが、何よりもまず木の香りで、すがすがしい気分になる。この木の香というのは、樹木から放出されるさまざまな揮発性の有機物によるようだ▼これは「テルペン」と呼ばれ、樹木が微生物などの外敵から身を守るために発散するという。これらの物質は地球温暖化の抑制に効果がある「エアロゾル」の生成に密接に関係していることが最近明らかになった▼エアロゾルとは、大気中に浮遊する微粒子の総称である。森林エアロゾルは予想以上に多量に大気中に存在し、粒子が小さいため上空まで達することがわかった。エアロゾルは例えば雲の形成を助け、その雲は地球に降り注ぐ太陽光を反射して、地球規模での温暖化抑制に大きな役割を果たしている▼森林などが光合成で温暖化ガスの二酸化炭素を吸収するのと合わせて、植物群の重要さがわかる▼大野山林では、車が入れる林道の脇には空き缶だけでなくその他のごみ、ひどいものはテレビなどの家電製品の不法投棄も目立つ。本紙八月十二日号で「原状回復してもまた不法投棄」の見出しで報道された城辺の不法投棄の実態はきわめて憂慮される。粗大ゴミまで収集するようになったゴミ行政の努力に水を差す行為でもある▼森林の少ない宮古である。海岸線のアダンギーなど、あらゆる植物群を大切にすることの意義を強調したい。そうでないと「美ぎ島」の景観だけでなく「島の心」も失われてしまう。

(2006/08/18掲載)

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