行雲流水

 甲子園では連日、高校球児たちの熱戦が展開され、野球ファンを魅了している。特に県代表の八重山商工の活躍が県民を喜ばせている▼同校は一回戦で千葉経大付属と対戦したが、五回までの四点差を六、七回で追いつき、二点差を追う九回には、一点差に追いあげたあと、二死無走者から驚異の粘りをみせて同点に追いつき延長戦に突入、見事勝利を収めた。二回戦では長野の松代を下した▼ところで、甲子園野球の波乱に富んだ道のりは近代日本の歴史を投影している。玉置通夫著「甲子園球場物語」によると、戦時中甲子園の内野はイモ畑に変身、外野は軍のトラック置場にされた。今大会は第八十八回であるが、第十七回から二十一回までの球史は空白になっている。戦後復活したのは昭和二十二年の第十九回からである▼米施政権下にあった沖縄から首里高校が初めて参加したのは第四十回大会であった。だが、首里ナインが持ち帰った「甲子園の土」が植物検疫法に触れるという理由で那覇港の海に捨てられてしまった。日本の戦後が終わっていないことを如実に示す事件であった▼その後、興南高校や豊見城高校が活躍する時代があり、第七十二、七十三回の連続二回沖縄水産が準優勝に輝く。そして平成十一年、第七十一回大会で沖縄尚学が悲願の全国制覇を成し遂げた。折から起こったスタンドのウエーブは自然発生的な観客からの祝福であった。第七十三回大会では「二十一世紀枠」で出場した宜野座が四強入りを果す大健闘をした▼今年は真に地元に根ざした八重山商工が快進撃、本日ベスト八をかけて強豪智弁和歌山と対戦する。県民の期待は大きい。がんばれ八重山商工。

(2006/08/16掲載)

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