行雲流水

 八月六日は広島の、九日は長崎の六十一年目の原爆記念日である。また、十五日は終戦記念日である。戦争の悲惨さ、愚かさを振り返り、平和への決意を新たにする日々である。平和は諸国民の切なる願いであるが、紛争は絶えることがなく、平和の条件の構築は遅々として進んでいない▼冷戦が終わったとき、唯一の軍事超大国になった米国の主導で軍縮が進められる好機であったが、実現しなかった。現在、米国の軍事費は年間四十兆円を超え、世界の軍事費の四割を占める。日本の軍事費は第五位でドイツやフランスより多い。すでに軍事大国である▼軍備は一旦拡大されると、国の経済の仕組みの中に構造化されてしまう。広瀬隆著「アメリカの巨大軍需産業」を読むと慄然とする。「ベトナムで罪もない農民の家がナパーム弾で焼かれ、親子が引き裂かれてジャングルをさまよっていたころ、軍需産業の幹部たちが高給をむさぼり、政府高官にソフトマネーと呼ばれる資金を提供し、戦争を持続していた」▼アメリカ本土から出撃して一夜で北朝鮮を消滅できる米軍が沖縄に駐留するのは、国家安全保障のためでなく、軍需産業のための基地であると、広瀬氏は断言する▼恐怖をあおって際限の無い犠牲を強いる欺瞞を沖縄県民は知っている。また、先日放送されたNHKの番組「日本これから」の、視聴者からのアンケートでは「日米同盟の強化」の四倍以上の人が「外交努力」を支持している▼六日、「広島平和宣言」は核保有国に核廃絶を要求した。また、そのためにも政府は、世界に誇るべき平和憲法を順守するよう求めた。人類史的な課題である。

(2006/08/10掲載)

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