行雲流水

 二〇〇六年度警察白書によると、中学生の三七%、高校生の九六%が携帯電話を持ちネットを利用している。アンケート調査によると、一時社会問題にもなっていた女子高校生の「出会い系サイト」の利用者は減少したものの、男子高校生の約半数が「わいせつ画像」や「残虐な画像」を見たことがあると答えている。ネット上には児童ポルノや薬物情報、「自殺サイト」などがあり、利便性の故に愛用されるネットの「負の側面」に対する理解を「白書」は改めて喚起している▼メールの送信回数は、一日十〜十九回という層が最も多い。別の調査によると、送信回数の多い者ほど運動やスポーツなど体を動かすことを好まない傾向がある。ちなみに、統計によると児童・生徒の体力や運動能力、免疫力は低下し、ケガの件数は増え続けている▼さらに憂慮されることは、ゲームやテレビを含めて、情報機器に囲まれた生活をする子どもたちの心の発達への影響である。幼児期に映像優位の環境の中で育つと言葉の発達が遅れ、自己表現力や他者への理解力が育たないといわれる。これらの能力は基本的には他者との人間関係のなかで形成されていくからである▼先に行われたエッセーコンテストの応募作品(本紙掲載)の中で、一高校生は、メールによる間接的なコミュニケーションの限界と直接対面による会話の重要性を書いて、注目された▼人は変化する環境の中で生きてきたが、情報メディアの圧倒的な力の前で、適切に対応することはそう簡単なことではない。まずは、その「負の側面」を認識し、自覚することが重要であろう。

(2006/08/02掲載)

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