行雲流水

 きょうは七夕である。数日前、月明かりの影響を避け、午後十一時ごろ北から南に流れる天の川を眺めた。「はくちょう座」とそのα星デネブはすぐ見つかる。全体的に霞んでいて星座はわかりにくいが、「こと座」の織女星(α星ベガ・織姫星)と「わし座」の牽牛星(α星アルタイル・彦星)はその輝きでわかる▼古くから牽牛星は農時を知る基準とされ、織女星は養蚕や裁縫をつかさどる星とされていた。この二つの星を恋人同士とみるのは、七月はじめこの二星が著しく接近する現象に起因していることはよく知られている▼沖縄の七夕は旧暦七月七日で、墓掃除を行い、墓前で線香をたき、酒などを供えてお盆の案内をする。いわゆるお盆の一環としての七夕であり、八重山のナンカソーロンは七夕盆を明確に表現している▼近畿地方にも沖縄の七夕観と同様な風習があるようだが、本土各地にある様々な七夕伝説や行事は、一般的に織女祭り、星祭としての性格が強い▼中国の風習伝来により、中世以来宮廷をはじめ貴族の間で七夕(棚機)に女性が裁縫の上達を願う「乞巧奠」が行われ、あるいは五色の薄布をはじめ山の物海の物を供える織女祭が行われた▼こうした祭りは朝廷、貴族、武家の年中行事だったようであるが、イモの葉にたまった露で墨をすって願い事などを書き、五色の短冊や色紙を葉ダケに飾って星祭りをする風習が一般庶民に盛んになったのは七夕が五節供の一つと定められた江戸時代からのようである。

(2006/07/07掲載)

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