行雲流水

 いよいよ夏本番か。寄ると触ると「異常な」という言葉が飛び交うほどの暑さが連日続いている。クマゼミの大合唱もすさまじい。クーラーをきかせた車中にいてもフロントガラスに射す日差しは強烈でアスファルト路面の照り返しも目に痛い▼それでもこの時期港から旧宮古郵便局跡地へと伸びる坂道はまさに別世界となる。街路樹ホルトノキの枝葉がトンネル状に路面を覆い歩道や車道に涼気ただよう緑陰を与えて熱気を抑えてくれるからである▼調査によれば緑に覆われた地表の温度は直射日光にさらされた地表より十〜十四度も低くなるという。十度以上も気温が下がれば体は確かに「涼気ただよう」と実感するにちがいない。気分も爽快になるはずである▼亜熱帯地宮古島にあっては住民は毎年否応なしに灼熱≠フ夏を迎えなければならない。いかに外気が高温でも外出は欠かせないし然も日常的にしなければならない。枝葉豊かに生長する高木種の街路樹を求める心情の発露は故あってのことである▼それゆえに涼を生み出す生活環境としての街路樹の選定はおろそかにはできない。樹種の採用にあたっては路面の温暖化を抑え歩道はもとより車道にも快適な緑陰を与えてくれる樹木を選別しうる先見性や専門性が必要となる▼しかし近年の県道市道の街路樹を見るにこれらの要件は正しく生かされているとは言い難い。枝張り乏しく歩行者を炎天下に置き去りにするような不適切な街路樹!とのそしりを受けている植栽の実例は少なくない。

(2006/06/30掲載)

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