行雲流水

 小泉政府は昨年暮れ医療制度改革大綱を決定した。去る十四日の参院本会議では高齢者の医療費抑制をめざす関連法案も与党多数で可決した。同法によると七十歳以上で一定の所得がある高齢者の場合病院窓口での自己負担は来る十月から三割(現在二割)に増える▼一定の所得とは政府が言う「現役並み所得」(夫婦二人で年収五百二十万円以上)で該当高齢者にとっては痛みを伴う増額となる。増額基準の年間所得もこれまでは六百二十万円以上が対象。それも五百二十万円に引き下げられた▼高齢者患者の窓口負担額を三割に引き上げることで政府は国の公的医療費の歳出抑制を果たそうとしているのである。さらに平成二十年度には一般の所得や低所得(住民税非課税)の七十〜七十四歳の自己負担も現在の一割から二割に増額される▼それだけではない。体調を崩しやむなく医療型療養病床に長期間入院する七十歳以上の高齢者は調理費コスト相当の食費や居住費(光熱水費)も十月以降は全額自己負担しなければならない。高齢者には何もかも厳しい負担増である▼高齢者の大半の収入源は「年金」だと言う。その年金の今年度給付が物価の下落を理由に〇・二%も削減されている。「物価スライド」による年金の引き下げは平成十五年度・十六年度に引き続き三回目である▼このような状況下で政府は「思いやり予算」として在日米軍の家族住宅建設や電気代水道代…等々、国民医療費の国庫負担削減額に相当する二千三百二十六億円を計上した。

(2006/06/16掲載)

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