行雲流水

 フランス政府の雇用政策「初期雇用契約」は、本来、若者の雇用機会の拡大をめざすもので、二十六歳未満の若者を雇用すると、最初の二年間は自由に解雇できるという、若者を雇い易くするねらいであった▼だが逆に雇用の乱発を招き雇用を不安定にするということで、三〜四月フランス各地で若者を中心に大規模なデモとなった。結局シラク大統領は政策を撤回した▼その是非を問うものでもなく、また社会事情が異なるので一概には言えないが、今の日本でこのような問題で若者たちが立ち上がり問題解決をめざすことができるであろうか、という話が出た▼「責任は持たなくていいから、気楽な仕事がしたい」というフリーターを通り越して、就職や勉学に意欲のないニートを生み出し、勉学や職業に対する誇りも失せつつある「威信格差」の日本社会。一人ひとりがそれぞれの目標をきちんと見つけられないという、「意欲低下」を生んだ学校教育の失敗という指摘もある▼一方でこれまでの「総中流」という感覚が「格差」に変わった。なだらかな格差はよしとしても、高い能力の人が高い賃金、低い能力のものは低い賃金、その仕組みはとりわけ市場経済がグローバル化した今日では必然性を伴うが、「勝ち組」「負け組」などといわれる延長上に、「親の所得が低いから、子どもの可能性が制限される」という社会であってはならない▼また人はパンのみに生きるにあらずで、自分に誇りを持つ生き方を如何に涵養すべきかが今問われている。

(2006/05/26掲載)

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