行雲流水

 いろいろな国の「ニュース」がそのまま紹介される番組があるが、それぞれの国や地域の表情や実相がみられて興味深い。先日、米国の「ABC放送」から二つのニュースが放映されていた▼ひとつは米国の抱える貧困層の問題である。ハリケーンに襲われたニューオーリンズで被害者のほとんどは貧困層で、逃げる手段の車もなければ長距離バスの切符さえ買えない人々であった。また、これらの地域では防災のための土木工事も他の地域に比べて手薄だったことも被害を大きくしたといわれている。栄養不良の子供たちのための学校給食があるとも聞く▼ある女教師のクラスの生徒に変調がみられるので調べてみると、その生徒は食事抜きで学校にきている事が分かった。帰る家には食べ物も無ければ金もないというわけである。その教師は募金などで金を工面して救援にあたった。この一女教師の行動をきっかけに、この種の活動が全米にいま広がっているという▼あと一つはイラクからの一部帰還兵たちの悲惨な状況である。頭に怪我をし、腎臓を破裂された兵士は証言していた。怪我で勤務を離れたため、ボーナスや給与の一部返還を求められ、生活に困窮している。しかも返済できなければ社会的に信用できない者としてブラックリストにのせられるので、金も借りられない。こうした人たちが千人以上もいるという▼誰のため、何のために、弱い立場の者は虐げられるのか。巨大な力による抑圧は国の内外を問わない▼不条理な沖縄問題。卑屈に従属する日本政府。民族の誇りは今深く傷つけられている。

(2006/05/17掲載)

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