行雲流水

 過日研修大会参加で全国各地から来島した一団を城辺の地下ダム関連の施設に案内した。館内に入ると一人の若い女性がにこやかに迎えてくれた。そして小さな台に小綺麗に並べられた葉野菜や果菜について威勢よく説明を加えた▼職員だと思った。農産物のよりよい生産にとって地下ダムの給水がいかにありがたいものであるか宣伝していると思った。しかしいずれも思い違いだった。女性は生産者農家で全国の皆さんにお会いしたくて平良からわざわざ駆けつけて来たと自己紹介した▼無農薬有機栽培を信条とする生産者グループの一員で育てた宮古産の農産物がいかに美味で健康にとっていかに素晴らしいかとうとうとしゃべり続けた。もとより館の許可は得てのこと。施設訪問の目的にそぐわない事態ながら圧倒された一同は彼女の回りに群がった▼大先輩農家の皆さんは概して口が重く自らの生産物を声を大にして宣伝することは苦手のようだと認識していた。絶大な誇りと自信を持った女性のたくましい語り口に拍手しつつ明日の宮古農業の展望は明るいと感じとった▼喜ばしいことに昨今若手農家の皆さんは臆することなく自己主張する。先日開店した「ワイドー市場宮古島」。各農家の売り場面積はわずかベニヤ一枚分で品数も五品目くらいだった。物によっては私が育てましたの表示もある▼品の売れ行き回転はいい。対面した生産者は「間に合わせきれません」と嬉しい悲鳴。健全な食材は生産者の意欲と情熱が生み出していると実感した。

(2006/04/21掲載)

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