行雲流水

 現行の教育基本法、学校教育法が公布されたのが一九四七年のきょうである。わが国は今歴史の大きな転換期にあるように思う▼明治維新に匹敵する大転換点が戦後の民主主義社会の到来であった。ただ歴史と伝統、日本文化や道徳観が軽んじられ、それがやがて教条主義的な学生運動を生み、さらには学校崩壊等の教育の破綻を招くことになる。今日、過去に類を見ない犯罪社会の出現はこうした倫理道徳の退廃に起因していよう▼いま教育基本法の改定がすすむ中で「愛国心」が問われ、なおかつ憲法改正の動向に時代の大きなうねりを感じる▼ところで今評判の藤原正彦著「国家の品格」が面白い。品位のある国家は他国も侵攻などしないと言い切る歯切れのよさが痛快である。数学者としての見識がユニークさをかもし、強烈なナショナリズム的側面も嫌味がない▼まず米国の属国的立場と、市場経済によって蔓延った金銭至上主義、そして欧米の「論理と合理」をこき下ろす。米国の鼻息をうかがう国際貢献ではなく、経済成長を犠牲にしても品格のある国家を目指せ、そのこと自体が最大の国際貢献だと喝破する▼精神性を尊ぶ土壌、美の存在、跪く心が天才を生み、「独立不羈」の国家、「高い道徳観」を持ち、「美しい田園」を保つことは、祖国愛や惻隠の情を生み「国家の品格」をつくると説く。欧米の教義は破綻しつつあり、今こそ日本の出番であるとも。品位ある国家を如何に創造するかが、わが国の今日的命題なのかもしれない。

(2006/03/31掲載)

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