行雲流水

 「ヤッター」、「バンザイ」。第七十八回選抜高校野球大会で八重山商工高校が富山の高岡高校を下して、沖縄県民を歓喜させた▼八重山商工は一回に金城がホームランで先制、三回と七回にも打線がつながり二点ずつを加点して初戦を飾った。この試合で先発の大嶺は十七奪三振の快投をみせた。また羽地の冷静な判断でピンチをのり切る場面もあった▼県民の多くがテレビで観戦、初戦突破の瞬間歓声をあげた。石垣港では、定期船が汽笛を鳴らして勝利を祝福したという。甲子園のスタンドでは郷土色豊かな応援が盛大に繰り広げられていた。心からの応援は郷土愛の自然な発露であり、全力でプレーするさわやかな高校生たちへの賛歌である▼それにしても野球は面白い。チームプレーでありながら選手個々人の能力や特性が十分に発揮できる。どきどきする。まさに筋書きのないドラマである。甲子園の高校野球は頂上にあって、全国の野球の好きな青少年に刺激を与え、裾野を広げる役割を果たしている▼だからこそ、甲子園野球はあくまでも青少年教育の一環としての健全さを堅持することを求められている。監督や生徒の不祥事は高校野球ファンをがっかりさせる。度をこしたスカウトも良くない。野球の名門校で、当該県出身選手が一人もいないということさえある。離島の八重山商工が実力で甲子園出場をかちとったことは、その意味でも注目される▼さて、八重山商工は二回戦で、本日二十九日の第二試合(予定)、強豪の横浜高校と対戦する。持てる力を十分に発揮して素晴らしい試合を展開するよう期待したい。

(2006/03/29掲載)

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