行雲流水

 総合雑誌『文藝春秋』の昨年五月号の警告リポート「奪われる日本」(米国の日本改造計画)は多くの国民に少なからず衝撃を与えたに違いない。このリポートは、過去十年間日本で進められてきた「改革」のかなりの部分が日本への米国の『年次改革要望書』の要求を忠実に反映したものであることを示している▼たとえば、郵政三事業のひとつ「簡易保険」の民営化要求がある。民営化のあとは対等な競争条件を要求、民営簡保を弱体化させて、簡保の擁する百二十兆円の資産を米国系保険会社に吸収させることが狙いとされる▼次なるターゲットは医療と健康保険制度である。そのひとつとして「混合診療」の解禁を要求している。「混合診療」とは保険のきく「保険診療」と保険がきかない「保険外診療」を同一の患者に行うことである。医療に市場原理を持ち込むもので、患者の貧富の差による医療格差を生むものである。米国はそこに生ずるビジネスチャンスを狙っている▼経済財政諮問会議と規制改革・民間開放推進会議は解禁に前向きだが、さすがに、日本医師会と厚生労働省が激しく抵抗したため解禁は先送りになっている。日本の国民皆保険制度はすべての国民が公的保険に加入していて等しく診療をうけることができる、世界に誇りうる制度である▼米国の公文書は、他国への各種要求が一義的に自分たちの国益であることを隠そうともしない。「米軍再編」も例外でないことを国民は知っている▼沖縄や岩国の住民の行動がそのことを如実に示している。

(2006/03/17掲載)

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