行雲流水

 科学・技術進歩のスピードはすさまじい。私たちの日常生活の中でもそのことが実感できる▼たとえば、ラジオの中にはいくつもの真空管が並んでいた。その後トランジスタが発明され、いち早く製品化に成功したソニーのトランジスタラジオが世界の市場を席巻した。今ではその機能も集積回路に組み込まれて、ラジオといわず各種の電気製品を軽量で効率的なものにしている▼世界初のコンピューターは工場のような建物いっぱいの大きさだった。宮古高校商業科の備品として導入されたコンピューターは冷房のきいた特別室に置かれていた。購入価格は千五百万円であった。今ではひけをとらない性能をもつパソコンを誰もが持っていて気軽に操作している。アメリカはナノテクノロジーによって、議会図書館のすべての情報が角砂糖サイズのメモリーに収容できる記憶装置を開発する▼驚いたことに、先日の新聞報道によると、モズクの主成分であるフコイダンの体内吸収力を高めるためにナノテクノロジー(超微細技術)素材のフラーデンを使っている。フラーデンはナノメートル(百万分の一ミリ)のスケールで、炭素がつらなってサッカーボールの形をした球体で、中空になっていて、その中に他の原子を閉じ込めることができる▼ナノテクノロジーを含めて科学・技術はさらなる可能性をもっている。人類の福祉につなげたいものであるが、憎しみや争い、生活苦や社会不安は消えることがない▼二百五十年も前に生まれたモーツァルトの美しい曲が流れている。

(2006/03/08掲載)

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