行雲流水

 きょう三月三日は桃の節句、雛祭りである。元は上巳(じょうし)の節句、即ち旧暦三月初めの巳の日の節句だったのが「巳(み)」を「三(み)」にかけて三月三日となり、明治の新暦採用により今日に至る▼源氏物語須磨の巻には、三月上巳の日に陰陽師(おんみょうじ)を召して祓(はら)いを行い、船に人形(ひとがた)を乗せて流したという記述がある。古代の中国ではこの日に、邪気を払うために桃の花の咲く水辺で「流水曲水の宴」を行った。太宰府天満宮で三月第一日曜日に催される「曲水の宴」もその流れであろう▼三月三日は国際的な「平和の日」でもある。一九八四年第四十七回国際ペン東京大会で「世界中のペンセンターで平和を願うキャンペーンを実施する」ことを日本ペンクラブが提案し、翌年のユーゴ大会で「三月三日の雛祭りが平和の象徴にふさわしい」との提唱がみとめられ、国際的な記念日となった▼ところでライオンズクラブ国際本部主催の第十八回国際平和ポスターコンテストで北中一年の川満真琴さんが、優秀賞に輝いたことはまことに喜ばしい。日本代表八点に選ばれることも至難なことだが、世界三十五万人の応募者の中から優秀賞(二十三人)に選ばれたことはまさに快挙である▼平和の象徴であるハトが各国の国旗をくわえ、ピースがパズルを完成させるというモチーフが素晴らしい▼平和は万国万人(ばんこくばんにん)の願いであり何人(なんぴと)とて、これを拒めまい。ちょっとした行き違いが誤解を招き、争いとなる。なんとも悲しい業(ごう)をもつ人間だが、それでもなお平和を希求し祈り続けねばならない。

(2006/03/03掲載)

<<<行雲流水ページにもどる