行雲流水

 『文藝春秋』は菊池寛が周囲の友人や新人たちの自由な発言の場として私費で創刊したものである。後に作家の育成、文芸の振興に貢献、今では総合雑誌として多くの国民に読まれている。沖縄では『新沖縄文学』があり、当初は文学作品を中心に編集されていたが第二十六号(一九七一年)からは「文化と思想」の総合雑誌とされて現在に至る▼地方では独自の歴史や風土に根ざして、『中頭文化』や『那覇文芸』、『うらそえ文芸』など多彩である▼それぞれの特徴は「特集」に表れる。『文藝春秋』の「日本の選択」(総選挙と官僚支配)、「奪われた日本」(米国の日本改造計画)、『新沖縄文学』では「沖縄研究の先人たち」、「新しい沖縄を求めて」、宮古出身者が中心になって編集している『ぱいぬ島文芸』には「宮古―水と人とそのくらし」、「翔け!宮古上布」などがある▼この二月、『はえばる文芸』が創刊された。特集は「戦争体験を風化させないために」(戦前・戦中・戦後の南風原)である。同誌によると沖縄戦で南風原町の住民九千人のうち三千八百人が尊い命を奪われている。陸軍病院の南部への撤退の際に多数の重傷患者が遺棄された壕のある町でもある。小・中・高校生の本格的な平和学習の記録が目を引く▼『なんぶ文芸』によると、名高い佐敷の「シュガーホール」の成果をどう合併後の南城市に引きつぐか、悩みが多いようである▼文芸の振興を含めて、文化の香り高い宮古島市をいかに築いていくか、今はその方向づけの時でもある。

(2006/02/22掲載)

top.gif (811 バイト)