行雲流水

 戦後まもなく沖縄にララ(アジア救済連盟)からヤギの贈物があった。それにまつわる話だが、ヤギと牛とを密殺した沖縄人二人に軍の裁判があった。「ヤギと牛殺しを同一に扱うのは不公平である。ヤギはクスイ(薬)だから」とヒージャーグスイの効用を説き、病気の家族にヤギを食べさせようとしたと、コザ市長らがヤギ殺しを弁護した。ヤギ殺しには執行猶予がついた。こうしたエピソードがララのヤギにつながったと言うから面白い▼ところで多良間の「ピンダ(ヤギ)で島おこし」に期待が膨らむ。数年前BSE(狂牛病)対策でヤギの危険部位(脊髄、腸など)焼却の厚労省通達によりヤギ料理店から客足が遠のきヤギへの関心が薄れた感がある▼最近FAO(国連食料農業機構)では、迫りくる食料不足に備えて、ヤギやヒツジなどの中小家畜が見直されている▼ヤギは熱帯、寒帯、湿地、乾燥などいずれにも適応性が強い。牛に比べて小さく、おとなしく女性や子どもでも飼える。牧草から樹葉など、幅広く食べる。いわゆる低コストである▼母乳に近いと言われるヤギ乳、乳製品やヤギ肉料理の開発と販路、嗜好の拡充を図ることだ。まずは観光客などに一食は必ずヤギ料理を出すなどの方法はないものか▼ヤギ牧場によるアニマルセラピー(動物介在療法)の開発も期待できる。ところで本紙の「日曜訪問」欄でも紹介された宮城淳一さんの美山羊牧場の番小屋でヤギ模合をやっている。ヤギ汁に舌鼓を打ちながらヤギ談義などに花が咲く。ヤギは将来有望とみた。

(2006/02/03掲載)

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