行雲流水

 変な表現だが、健康のためなら死んでもいいと言わんばかりの健康志向ブームである。テレビCM等に紹介される商品等の氾濫ぶりに嫌気がさすほどだ。だが、そうした商品が紹介された翌日には、その品物の値段が上昇し、品薄になるという▼いちいち取り上げるときりがないが、ともかく赤ワインのポリフェノールがいいと言えばそれに飛びつくという有様である▼ちなみに紅芋、イチゴ、ナスなどのアントシアン系色素、お茶のカテキン類、コーヒーのクロロゲン酸などもポリフェノールなら、他の多くの野菜や果物などにも含まれているのだから慌てる事ではない。お互いの周りにある食べ物に感謝し、美食に走らず、粗食ぐらいが丁度健康にいいのではないかと思う▼食べ物に恵まれ、グルメ志向が進む一方で、特に若い女性はいかがわしい製品等で無理なダイエットに走る。生き生きした命の躍動感や、「生命」への実感が乏しいのはなぜであろうか▼飽食の時代と言われるが、「いただきます」と言う感謝の言葉を改めて問い直さねばならない。われわれが食しているのは、野菜でも肉類でも、すべて命あるものである。他のものの命を取り入れることで己の命を支えている事実を忘れてはなるまいと思う▼暮れから正月にかけて風邪を引いた。その風邪に誘発されて忘れていた持病の喘息の発作が起きてしまった。己の不摂生で自業自得だが、自重自愛の天の警告だと、これもまた感謝せねばと思う。

(2006/1/20掲載)

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