行雲流水

 『今がわかる時代がわかる世界地図』(二〇〇六年版)が出版された。この本は、地理上の世界地図であることに止まらず、最新の情報をもとにテーマ別に世界の現状を解説しており、世界の中のわが国の現状を考える上で大変参考になる▼例えば、「国連開発計画」によると「人間の豊かさ」を表す「人間開発指数」は北欧あたりが上位をしめ、わが国は次第に順位を落としている。男女間の平等さを表す指数も先進国では際だって低い▼晩婚化は世界的な傾向であるが、気になることは若者の低収入が結婚の妨げになっていることである。ちなみに、三十歳までに結婚している人は年収の高い人で半数に達するが、年収の比較的低い人の場合約一五%にとどまっている▼わが国の地域間、産業・企業間、個人間の格差は広がる一方で、所得分配の不平等さを示す「ジニ係数」は九〇年代から次第に上昇して、格差の大きいアメリカ型の社会に移行しつつある。雇用形態の変化と、税制が本来持つ再分配の機能を失っているからである▼世界に目を向けると紛争地帯は世界中に広がっており、テロが日常化している。難民問題があり、貧困と食糧問題もあって世界は不安定要素に満ちている。一方でロシアと中国の軍備増強、世界の軍事費の四割を占める米国の世界戦略、それに巻き込まれる日本。その中の「沖縄を見よ」▼「平和で民主的な文化国家」を築くわが国の戦後理想が坂をころげ落ちていく。今年二〇〇五年はその加速度が増した年として歴史に記録されるのだろうか。

(2005/12/21掲載)

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