行雲流水

 「私たちはどこから来たのか、私たちは何者か、私たちはどこへ行くのか」。このゴーギャンの普遍的な問に、歴史も、芸術や科学もそれぞれの仕方でアプローチする▼「宮古郷土史研究会」はこの地の歴史、民俗、言語、宗教、社会、芸能、その他文化一般の総合研究を行うことを目的に一九七五年に設立された。その後、毎月定例会を持ち、隔月刊の「会報」を発行し、二〜三年ごとに研究誌「宮古研究」を発行している。会員の熱心な研究活動と組織体制の確かさを示すものと言えよう▼今年は、この会が設立三十周年を迎える。折しも、宮古の「旧記」編さんから三百年に当たる。ということで、先日、記念シンポジウムが開催された。シンポジウムでは「与那覇勢頭と目黒盛について」(下地和宏)、「漲水御嶽由来伝承の蛇聟入〈苧環型〉」(下地利幸)、「波平恵教と落書事件」(砂川幸夫)、「近代宮古の民衆の暮らし」(仲宗根將二)が報告された。質問も多く出されて、関心の広がりを感じさせた▼懇親会でもいろいろな話を聞いた。「研究者に共通するのは郷土愛である」、「人を感動させるようなことがどこにでも秘められている」▼生命科学の発達とバーチャル(仮想)世界の広がりによるアイデンティティー(自己同一性)の危機がある。神話や伝承は人と動物を婚姻させることで、生命の流れという同一性で捉え、「非人は人でない」という形式論理をこえている▼過去と現在を結んで未来を拓く。「宮古郷土史研究会」の一層の発展が期待される。

(2005/12/07掲載)

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