行雲流水

 台風やハリケーン、地震や津波など、近年大きな自然災害が多発、各地で多くの人々の生活が破壊されている。こうした災害に如何に対処するかということは国や国際社会にとっての大きな課題となっている▼特に地震に関しては、東海地震の危険性が言われていて、建物の耐震性への関心は高く、不安は大きい。そんな折も折、マンションなどの耐震強度偽装問題が起こり、国民に衝撃を与えている▼もうひとつ、小学一年生の女の子が何者かに殺害されてダンボール箱に入れられていた事件。学校では集団登校を始めたという。このようなニュースが連日、繰り返し報道されている。子供たちへの影響は深刻で、植えつけられる「人間不信」が憂慮される▼しかしラジオで聞いたが、世の中にはこんな話もある。長野県の小さな小学校の運動会で子供たちが風船を飛ばした。その一つが六十キロ離れた隣の県の林檎畑で働いている農夫婦の前に落ちた。その夫婦は林檎を二箱手紙を添えて子供たちに送った。このことをきっかけに夫婦と学校の交流が始まり、この十九年、林檎は毎年学校に届けられた▼農夫が重病になったとき、「子供たちとの約束はどうするの」という妻の声と子供たちの手紙に励まされて健康を回復、林檎をつくる喜びを続けてきたという▼せちがらい世の中を生きていく子供たちだが、心の中には揺るがぬ「人間愛」が育ってほしい。紙風船「落ちてきたら/今度は/もっともっと高く/何度でも/打ち上げよう。美しい/願いごとのように」(黒田三郎)。

(2005/11/30掲載)

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