行雲流水

 昨今小泉政府が打ち出している高齢者医療費に対する法案は弱者救済の理念に欠けると批判されている。厚生労働省発表の「医療制度構造改革試案」によると七十歳から七十四歳までの一般所得者や低所得者(住民税非課税所帯)の医療費自己負担は三年後には現行の一割から二割になる▼七十歳以上の場合は来年十月をめどに二割から三割に増額。患者の自己負担上限額も来年十月をめどに引き上げられる。脳梗塞で寝たきり患者の場合現行制度では窓口負担(自己負担)は月五万千円▼ところが改革試案では二倍の約十万二千円となる。患者自己負担が上限額をこえた分は手続きによって払い戻しを受けることができるが同案では上限額四万四千四百円となり四千二百円の負担増となる▼夫婦二人の年収が約六百二十万円以上もしくは一人所帯で年収約四百八十四万円以上の「現役並み所得者」の窓口負担は二割から三割に引き上げられるので肺ガン等で十六日間入院(退院後は在宅酸素療法)だと現行月約十二万円▼しかし改革試案では約十八万円。上限額超の払い戻しも現行より一万一千円の負担増となる。しかも来年度実施される公的年金等控除の縮小により厚労省は「現役並み所得者」の基準を夫婦所帯で約五百二十万円以上一人所帯で約三百八十万円に引き下げる▼結果新たに約八十万人が「現役並み所得者」となり自己負担増所帯が増える。医療費の自己負担増は家計の圧迫につながり受診率低下へと連動することになる。

(2005/11/11掲載)

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