行雲流水

 わが国の文化は「恥じの文化」だとも言われたものだが、特に若い世代では「みっともない」という感覚が薄れ、したがってその言葉が失われつつある。学校給食で食べ残したパンを平気で捨てる子供たちにはもはや「もったいない」という言葉も実感できまい▼変化は世の常であるが、今は国際化の時代、一国のありようが他国の人々の生活にも大きな影響を与える。その典型的な例が食糧問題である。この問題は、日本国際飢餓対策機構(編)の『世界と地球の困った現実』(飢餓、貧困、環境破壊)に精しく取り上げられている▼世界では今必要な穀物の二倍の量が生産されているが、「飽食」や「放食」がある一方で八億の人々が飢えている。途上国から先進国への食糧や牛などの飼料として大量に輸出されるからである。これらの国では農民たちは大企業に農地を吸収され必要な食糧を自給できなくなり、農業労働者となって、その低賃金で生活が困窮している▼食糧生産には水が必要であるが、日本への食糧輸出のために使われる水は日本の生活用水の二・七倍であり、これらの地域では水不足が深刻になっている。また企業による生産の拡大のために一年間に日本の面積の半分の熱帯林が消えている▼日本国際飢餓対策機構は、劣化した土地の再生等による現地の自立を支援している▼ところで、この本は国際理解、平和、人権、環境などの学習を進める「総合的学習」への活用を期待されている。呼びかけている「共生」の思想こそが普遍的な価値を持っている。

(2005/11/09掲載)

<<<行雲流水ページにもどる