行雲流水

 国際的学力テストで日本の子どもらの学力低下が問われ、「ゆとり教育」や「総合学習」に、風当たりが強まるかに見えたが、最近、学力論争が鳴りを潜めたのはどうしてであろうか▼今、学校と社会の間で重大なひずみを生じているのがニートの問題である。ニート(NEET)とは、学校に行かず、仕事もせず、さらに職業訓練も受けていない若者をさす。その数は〇二年四十八万人、〇三年五十二万人と年々増加の傾向にある。またニートを含めフリーターの数も〇二年二百九万人、〇三年に二百十七万人と増加している▼これらは就職環境の悪化や今の就業形態に適用できないなど、社会の変化による問題として捉えられようが、それまで積み上げてきた彼らの力が社会の変化についていけず、踏み出すパワーを失っていると見ることもできる▼「学力」が学校のみのものであってはならず、「社会力」=「生きる力」を育成する意義がそこにあろう。結果的に見て今の教育は総合や統合化は生徒任せになっているのが実情で、指導する側の理念と、やはり教育の質の変革が求められよう▼少子・高齢化社会が進展する中で年金問題等社会保障制度の先行きの危うさよりも、道徳の荒廃やニートの問題等、今や理念なきとも言えるこの国の教育は国そのものの存亡に関わろう▼五〇%のマス(大衆)期を越え、ユニバーサル・アクセス(普遍化)段階と呼ばれるわが国の高等教育だが、フリーターやニートに象徴されるこの国の姿には「将来像」が描けない。

(2005/11/03掲載)

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