行雲流水

 久しぶりに八重山に行った。十年前に比べても街の風貌は大きく変わっていた。まさに観光地である。観光産業は他の産業への波及効果も大きく、重要な産業である。しかし、いろいろな問題点も露呈している▼八重山に限らず、「沖縄は観光植民地」だと言われる。観光者が増加、観光収入が増えたといっても、地元への恩恵度は心もとない。「せめて雇用効果に期待したいのだが」という嘆きの声も聞かれた。現在八重山には無登録の住人が若者を中心に一万人以上いるとされる。住民登録がされていないので住民税の賦課はされないし、地元の雇用関係にも影響を及ぼしている▼「以前、つり糸をたれた場所にも自由に行けない」という声、ダイビング産業の地元漁業への影響にも、不満がくすぶっているようである。海だけではない。今、飛行場建設による観光開発がさらに進むと見込んだ県外企業によるホテル建設と土地の買い占めが広範囲に行われている▼結局は資本の論理でことは進むだろうが、観光開発に際しては、地元には攻めの対応が求められる。周年にわたる農産物の安定供給体制の確立、観光産業に携わる質の高い人材の育成、環境の保全など課題は多い▼宮古同様グラウンドゴルフは盛んであるが、八重山では、「OKなし」などのルールの遵守とマナーが徹底しているようで、宮古の競技者のマナーの悪さが話題になっていた。「自然」だけでなく「人」もまた観光資源である▼何より大切なことは、地域社会の健全さであり、豊かさであり、住み良さである。

(200510/26掲載)

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