行雲流水

 東京の大手新聞社は今回の衆議院選結果について緊急全国世論調査を実施した。それによると自民党の圧勝を「勝ち過ぎ」と答えた人は過半数もおり、獲得した議席数に対しても五六%が「少ないほうがよかった」と回答▼自民党圧勝を「よかった」と歓迎する人は四九%もいるのに、議席数について「ちょうどよかった」と答えたのはわずか三三%である。相反した意外な数値である▼しかし小泉首相が圧勝(議席数)を背景に強引な手法をとる不安を「感じる」と答えた人が六三%もいることを思えば納得できる。「…解散脅しにはじまり、閣僚罷免、解散断行、造反者の非公認、刺客騒ぎと徹底的につづいた強行策」(毎日新聞・岩見隆夫)▼不安を感じると回答した人々の脳裏にはそんな思いがよぎったのか。それならなぜ「小泉自民党」は圧倒的に受け入れられたのか。メディアは郵政民営化に賛成か反対かの二者択一を迫った小泉首相の「国民投票化」作戦に有権者は引き込まれたと報じた▼「年金問題・サラリーマン増税・消費税率引き上げ・憲法改悪問題」にはふれない「憲法違反の解散や強権的な権力の暴走を許すのか」と野党はこぞって繰り返し訴えた▼それでも「通り魔のように孤剣を振るって修羅場に駆け込み血路を開く一点突破型の小泉政治」(五百旗頭真神戸大学教授は歴史的大勝利を手にした。郵政民営化の「賛否」に単純化された選択肢に左右されたと指摘される有権者。私たちは重い政治的責務を背負ってしまったようだ。

(2005/09/16掲載)

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