行雲流水

 石橋湛山は戦前、自由主義思想の影響を受け、言行一致のリベラルな新聞人として政府の軍国主義的政策に一貫して反対し続け、軍隊の縮小、植民地の放棄を主張した▼敗戦直後は、占領軍の日本駐留費を日本が負担、それが政府予算の三分の一以上をしめ財政を圧迫した。こうした占領政策に抵抗し、米軍から反占領軍的人物とみなされ、公職を追放された▼追放解除後は国会議員に当選、一九五六年には自民党総裁選で岸信介を破り、首相に指名される。新政権には「官僚制を打破する政治」が期待されたが、病気のため就任二カ月で辞任した▼こんな意味の言葉が残っている「政治家が追求すべきは私的利権ではなく、国民の信頼であり、名声である」。例えば、日本社会の病巣とも言える「天下り」による構造的な歪みをみるとき、石橋政権が長く続けば、少しはましな日本になったかも知れないと思う▼選挙を前に政策論争が華やかに展開されているが、未来に明るい展望は見えてこない。国の借金は毎年増加、現在七百八十一兆円で、国と地方を合わせると一千兆円を超えた。格差は拡大するばかりで、若者の雇用環境の劣化は深刻である。多くの国民は高い税負担に喘いでいるが、その税金のほとんどは借金の利息として消えている▼バラ色の政策(作文)にしらけもするが、選挙権は行使しなければなるまい。それが、世の中を方向づける政治に参加する唯一の方法なのだから。如何なる圧力にも屈せず、扇動されるムードにも流されずに、主体的判断で選挙に臨みたい。

(2005/08/31掲載)

top.gif (811 バイト)