行雲流水

 衆院本会議でまさかの五票差で可決された郵政民営化関連法案。新聞は自民党大量造反による「薄氷の可決」と書きたてた。全国四十七都道府県すべての県議会もこぞって郵政民営化反対を決議している▼しかし現在審議中の参院特別委員会で小泉首相は「なぜ民営化にみんな反対するのか。この程度のことに反対して…」と語気を強める。委員会では野党のみならず与党の舛添要一氏もなぜ今郵政民営化かとせまった。対する首相の答弁は不透明▼参院の委員会テレビ中継で強く印象づけられたのは官から民へ≠フ決まり文句を声高に繰り返す首相の険しい表情だった。―弱者への配慮がない。「民」とは利潤を獲得するのが善である。もうけを善とする「民」にすべてを任せていいのか(元副総理・後藤田正晴氏)▼白石真澄東洋大学助教授も「官」は無用でも必要悪でもない。利益追求のみを最終目的としない公益の提供はどの時代にも重要…採算や成果で割り切る「民」は、経済合理性に合わない地方や弱者を切り捨てかねないと警告する▼日米の民間銀行や保険会社に郵便貯金や簡易保険の資産三百四十兆円を明け渡すことがねらいだとの指摘もある郵政民営化。現行の郵便局では口座手数料はなく平日の時間外や土曜日・休日のATM(現金自動預払機)の利用も無料▼民間銀行における土曜休日のATM利用は有料である。利潤のあがらない店舗の合併統廃合もすすんでいる。民営化郵便局もやがては統廃合か。地方住民の不安は大きい。

(2005/08/05掲載)

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