行雲流水

  戦後60年目を迎えてもなお語りつくせない沖縄戦の悲惨な実相。しかし地獄絵さながらの戦禍を直接こうむり、弾丸の嵐の中近しい肉親を失った戦争語り部たちの世代は極めて高齢となり時流から遠のきつつある▼今年、県内多くの小中高校では「6・23慰霊の日」に寄せて語り部世代の皆さんを招き生身で凄まじい戦火をくぐってきた強烈な体験をもつ者のみが伝え得る残虐非道な戦争の実像について学び知る会を催した▼ここ宮古島においてもいくつかの学校で戦争体験者の語りに真顔で聞き入る児童生徒たちの姿があった。父母世代にも相当する高齢の大人と真摯に向き合わせたのはアインシュタインが指摘した「見下げ果てた卑しむべきもの戦争」の現実だった▼今年度の平和メッセージ詩の部門で最優秀賞に輝いた上原凛君(与那原小学校六年生)が「ぼくは戦争を知らない」と詩の中でくり返していたように同世代は時と共に社会構成の大半を占めてきた▼イラクに派遣された自衛隊が危うい状況下におかれつつあり平和憲法の存立までが不確かなものとなりつつある今日、語り部たちは人類最大の悲劇戦争≠フむごい体験を風化させまいとふんばり一語一語かみしめて語っている▼県内の主要メディアも戦争の蛮行を告発する特別紙面づくりに精力的に取り組んでいる。戦後60年。上原凛君の作詩は続く「今ぼくにできること/戦争がいやだといえること/戦争のこわさを伝えていくこと/そしてみんなで平和を願うこと」―と。

(2005/07/08掲載)

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