行雲流水

 市民歌舞劇団「きずな」によるミュージカル「貢布織女(こうふおりめ)の歌」(脚本音楽・花城武彦、演出・宮国敏弘、制作・佐渡山力)が5月28日、マティダ市民劇場で開催され、駆けつけた多くの市民に大きな感動を与えた▼この作品は、人頭税制下の宮古の苦難の歴史を舞台に、不条理な体制と人々の苦悩、そして、その中でも脈うつ反骨精神と生活者の持つ向日性が、織女とその恋人の数奇な人生を通して描かれる。最後に光明をもたらす清国人の登場は、人々の願いや闘いの成果、あるいは歴史の方向性を象徴する▼舞台は総勢100人で多彩に展開されるが、響く三味線の音も、和する歌声も、華麗な踊りも、バレエのしなやかな動きも、力強い空手の演舞も、方言の懐かしさ嬉しさも、人々の伝統的な姿や心情そのものの表現である▼花城氏は民謡の「豆(まみ)が花(ぱな)」に触発されて、この歌舞劇を書きあげたという。その「豆が花」では、役人が父親に娘を自分にくれるように迫る。きかなければ貢納布二十よみの細物を織らすぞと脅す。それでも父親は「甘んじてそれを受けよう」と要求をつっぱねる▼「夏花が咲いたらあなたにから、美しく織ってあげよう」。佐渡山力氏が旋律をつけた池間島に伝わる民謡「貢布織女の歌」にも同じ真実が込められている▼花城氏の郷土愛と使命感と情熱、同期生の熱い友情、それに音楽や演劇、芸能を愛する仲間の心意気が1つになって伝統の継承と新しい文化の創造を目指す目的はこの舞台に見事に結実した。「♪、揃(する)いどぅ美(かぎ)さぬ、ユーヤナウレ」。

(2005/06/02掲載)

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