行雲流水

 その昔、研修で神奈川県の横浜翠嵐高等学校に配置された。4階建て校舎に囲まれた校庭は和風のミニ公園づくりで、広い池の周りには憩いのベンチが幾つもあった。池の後背地の小高い岩組みの天端から落水する滝の音は清涼感をもたらしていた▼校舎の上の階からはそんな美しい校庭が眼下に見下ろせた。各階の広くて長い廊下の中央部には共用トイレがあった。初めて目にしたトイレにこれまでの認識はみごとに打ち砕かれた▼間口4メートルほどもあるトイレは全体も個室も明るかった。タイル張りのフロアは着衣のままぺたっと座りこんでもいいほどにいつも清潔に乾いていた。大小の便器もホテル並みに磨かれ一点のシミもなかった▼石垣島でもそんなトイレを目にした。元宮古工業高校長瀬名波さんに案内されて訪れた「真っ白い灯台と…断崖がすばらしい…景勝地」(CityDO)の御神崎(おがんざき)でのこと。食後、用便のため数10米先のトイレに向かった▼脳裏に、トイレ特有の臭い・トイレットペーパー(巻き紙)無しの先入観が走った。が、思いは完全に逆転した。臭いはもとより内外どの壁にも落書き1つもなく、棚には予備の巻き紙が四個もきちんと並んでいた。これ公衆便所!と目を疑った▼訪れる観光客に不快感を与えないよう関係機関が最寄りの集落の方に委嘱。一過性ではなく常時きれいに掃除していると言う。観光地の快適な環境整備。宮古島の場合その手法の知恵袋は新市行政と観光協会が担うことになる。

(2005/05/27掲載)

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