行雲流水

 教育基本法は、その第1条で教育の目的を次のように述べている「教育は、人格の完成をめざし、平和な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」▼戦後の教育はこの目的をもって行われてきたが、その実現が十分達成されたとは言い難い。むしろ、深刻な問題を抱えてきたというのが現実である▼今、教育現場では「忙しすぎて、生徒と触れ合う余裕がない」という声が多く聞こえる。教育の根幹にかかわる大問題である。教員の評価制度にも見られるように、教員の管理強化が、教育の向上につながるという考えが根底にあるとすると問題である▼もう1つ、「学力低下」が今盛んに論じられている。それまでの教育の様々なゆがみを是正するために「生きる力」や「学ぶ力」を重視する教育への改革がなされたが、国際比較で「学力」が下がったということで、「朝令暮改」、逆戻りの様相である▼この国際比較と同時に行われた調査によると、たとえば「数学が好き」「数学が役に立つ」などを含んで「数学に積極的に取り組んでいる」と答えた中学生は17パーセントで、国際平均の55パーセントに比べて極端に低い。「好きこそものの上手なれ」であるから、問題はより深刻である▼確かな学力をつけるということを含めて、全人教育を推進する創造的な実戦こそが求められる。「混乱の時には原点にかえる」という言葉もある。

(2005/05/18掲載)

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