行雲流水

 相変わらず常習化しているオトーリ飲酒法。22年前、某高校の生徒がオトーリ絡みの飲酒運転で交通事故を起こした。自損の死亡事故だった。大人社会、中でも同世代の子を持つ親たちの衝撃は大きかった。にわかにオトーリ強要飲酒に対する風当たりが強くなった▼高校生出身地の議会では村長上程の「オトーリ廃止に関する決議案」が満場一致で可決された。議会が住民の嗜好について規制するという異例の対応はメディアを騒がせた。NHKは全国向けのテレビニュースでも取り上げた▼オトーリ賛否論は今も島内ではしのぎを削りあっている。そんな中オトーリについて多面的視点から考察を加えその実像を浮き彫りにしようと試みた冊子が誕生した。出版を発案企画したのは宮古支庁の元次長平良一男氏である▼冊子の表題はそのものずばり『おとーり』で副題は「宮古の飲酒法」である。内容の骨子はおとーりの由来・おとーりを巡る社会の動き・おとーりの思い出・自由意見…などで32名が執筆参加している▼「オトーリ」にまつわる意見や論述はこれまでも新聞紙上で個別に展開されてきた。同冊子のように相対する賛否意見や見解が1つのテーマによって共通紙面に勢ぞろいするのは製本上珍しいことだと言う▼「端的に言えば酒の回し飲みであるがオトーリの中には歴史性、厳粛性、神格性、大衆性が内在する。単に酒の回し飲みとは言えない重みがある」と述べる平良氏。オトーリに対する思い入れの熱さが伝わってくる。

(2005/05/13掲載)

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