行雲流水

 海よ、僕らの使う文字では、お前の中に母がいる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある(三好達治)。ちなみに、フランス語で、母はm`ereで、海はmerである。海は生命の故郷、喜びも哀しみも深く秘めている。雨も降れば風も吹く▼去る8日(日)は「母の日」。母親への思いを込めた子供たちの微笑ましい絵が新聞の紙面を飾っていた。各家庭でも、プレゼントを贈るなどいろいろな形で母親への感謝の気持が伝えられたことだろう。思えば、母親は子育ての苦労と喜びの中で母となるし、こどもの子供時代そのものが母への最大のプレゼントとなる▼青少年赤十字運動の盛んなころには、こんな歌が歌われた。「いつもいつも口ずさむ歌/それはお母さんに教わった歌/どんな時でも私が歌えば/だれとでも心の触れあう愛の歌。いつもいつも胸に咲く花/それはお母さんにいただいた花/夏も真冬も心に開いて/だれとでも楽しく分けあう愛の花。いつもいつも宵に出る星/それはお母さんを喜ばす星/青い優しい光をたたえて/慰めの思いに輝く愛の星」▼母親からもらった一輪の花が根っこにあって、人は色とりどりの花を咲かすようになるのではないか▼子供たちが大きくなると、母親どうしでグループを組んで離島巡りをして「母の日」を過ごしたりする▼それでも、いつまでも母は母、子は子である。「心配御無用、ちゃんと食べているよ。レシートを入れとくから見てチョーダイ」(斎藤洋子、『日本一短い母への手紙』より)。

(2005/05/11掲載)

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