行雲流水

 生活の中で、自然との触れ合いが少なくなり、季節感も薄れたとはいえ、ヒトはやはり自然の子である。と言うより、いやおうなく、自然のなかに組み込まれている存在ではないか▼萌えでる「みどり」は生命の根源的な力を感じさせるし、安らぎを与えてくれる。それは、昔、緑の森のなかで暮らしていた遠い記憶のためらしい▼「1/fのゆらぎ」というのがある。ヒトの心臓の鼓動(振動数f)は機械のように一定ではなく、いくらかのゆらぎを持っている。その際、揺らぎの幅は1/fになるというものである。例えば鼓動数が60の場合、ゆらぎの幅は1/60になる。これから日に日に暑くなってくると、そよ風が恋しくなる。ところで、リズムよくそよぐ風にもゆらぎがあって、その大きさが1/fになるときにヒトは風をここちよく感ずるという▼黄金比というのがある。その比は1対1・618である。向日葵の花の中にはらせん模様に右まわりと左まわりの小さな花が並んでいるが、その数の割合が黄金比になっている。その他にも貝殻の成長など自然界にしばしば黄金比がみられる。ところで、人間の描いた美の傑作と言われる「ミロのヴィーナス」では、体を上下に黄金分割する点におへそが鎮座している。自然とかかわる人間の美意識の不思議さである▼野良猫の脳はよく発達しているが、飼猫の脳はダメだという研究もある。人間は文化によって脳を発達させてきたが、諸機能のバランスの取れた発達こそがのぞましい▼人間は、あくまでも自然の中の生き物である。

(2005/04/13掲載)

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