行雲流水

 戦災後の都会で、いち早く家を建てたのは沖縄県人だったが、いつまでもより良いものに建て替えなかったのも沖縄県人だった、という話を聞いたことがある。こんな話もある。南のある途上国で、農場労働者の日給を増額したら、そのぶん労働者たちは働く日数を減らしたという▼亜熱帯に住む沖縄県人は、温帯に住む勤勉なヤマトの人と、その日暮らしに近い熱帯に住む人たちとの中間的な生活スタイルを持っているのではないか。伊波貢の著書『おきなわデータ算歩』もそんなことを感じさせる。この本は、データを通して沖縄を算(散)歩することで、沖縄の特性を認識しようとするものである▼やっぱりそうかと思わせるものがあり、意外なものもあって、面白い。沖縄は他府県にくらべて共同体的な要素が大きく、家族数は多く、庭つきの広い家に住んでいるというイメージがあるが、意外にも、1人当たりの住宅スペースは日本一狭いし、自分の土地にすんでいる人の割合も都市並に低い。また、核家族世帯の割合が全国で3ばん目に高い▼所得は全国平均の7割で、預貯金残額も最下位であるが、堅実な生活をしているとはとても言いがたい。魚介缶詰の購入額もティッシュペーパーの購入額も全国一である。1000人当たりの飲食店は全国一だし、外食費の中でもハンバーガーの飲食率は全国一である▼産業面では、もずくの全国シェアが99パーセント、黒島の牛は人口の17倍、伸びるマンゴーや菊等のデータもあって、示唆に富む▼自らを知ることから、ことは始まる。

(2005/03/30掲載)

top.gif (811 バイト)