行雲流水

 沖縄の長寿神話が潰えてから、本県の食と生活習慣病の問題がクローズアップされてきた。先ごろ「子供の肥満・大人の肥満」をテーマに第8回県医師会県民講座が那覇市で開催され、様々な問題点が浮き彫りになった▼沖縄の食の脂質摂取の割合が高いのは以前から指摘されていたが、これが肥満の主要因のようだ。肥満は遺伝的要因が30%、環境的要因が70%といわれる。その肥満が動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病などを誘発するという▼ところで乳幼児の肥満は、成人の肥満と深い関わりがあり、最近の研究では母乳で育てた子は肥満が少なく、また母乳は多くの生きた感染予防物質を含み赤ちゃんへの最初の予防接種でもあるという。「母乳栄養90%作戦」が提唱され、最低1カ月、できれば1年、母乳で育てましょうとの主張がある▼母と子の最初で最大のコミュニケーションは授乳であり、愛情の絆を培う原点でもあろう▼核家族化、共働きなど子育ての環境変化により子供を他者に預けて育てる「育児の社会化」が進み、親たちのシステム依存が進むなかで、子育てに祈りがなくなったとさえ言われる▼昨今は乳幼児の虐待さえ頻発する。また「すぐイライラする怒りっぽい子が増えたのは、長時間保育で親子関係が希薄になったからではないか」との指摘もあり、親の側の利便性の方を最優先する諸施策に疑問の声もある。特に「親心」の喪失や希薄化はなんに起因するかが今問われている。

(2005/03/11掲載)

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